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平成20年6月1日付 朝日新聞の記事によせて(意見書)

柔道整復師の療養費委任払制度について

意見書
社団 JB日本接骨師会
会長 五十嵐 仁
会長代行 松原 伸行
専務常任理事(保険部長) 諸星 眞一

「多部位・濃厚治療が問われている。これは柔道整復師診療・治療だけに生ずる固有の問題でありましょうか。医師のそれにはそのような問題はないのでしょうか」

「なにゆえに、この問題が柔道整復師について特に論じられるのでしょうか。柔道整復師診療・治療の療養費委任払制度とこの問題とは関連があるのでしょうか」

「柔道整復師の診療・治療に、この問題が生ずる原因があるのでしょうか」

「療養費委任払制度自身にこの問題を生む原因があるのであれば、その制度設計及び運用について、どこに問題点があるのでしょうか、その解決策は何か」

「最近、医師不足が問題となっていますが、柔道整復師制度の活用がこの解消の一助になると考えられます。この点からも、多部位・濃厚治療の問題をきちんと解決を図らねばなりません」

私達は、このような観点から多部位・濃厚治療問題を考えることにします。それは柔道整復師の診療・治療の健全な発展と療養費委任払制度の安定的な運用を願うからであります。私達は、この制度が療養費の不正請求の温床になっているという不当な誤解を、この制度の問題点を明らかにすることによって、速やかに解消したいと考えています。
  • 1.問題提起
    平成20年6月1日付朝日新聞記事は、柔道整復師の療養費委任払いに関し多部位問題を中心に取り上げております。朝日新聞社は、柔道整復師の診療・治療報酬についての療養費委任払い制度の実態について取材し、この制度の病理的現象を世に問い、厚生労働省が指導してきた今までのこの制度の運用のあり方を質そうとしております。この問題は、既に平成5年の会計検査院でも取り上げられました。また、その後も、東京新聞・毎日新聞でも取り上げられた問題で、今回の朝日新聞の記事に始まった問題ではありません。これが今まで解決されずに残っているのは、私達業界人として強く反省せねばなりません。しかし、その当時、この制度の乱用・悪用だけに目が向けられ、その問題発生の根本原因についての理解が不足していたと思われます。朝日新聞社のこの問題に関するキャンペーンは、社会保険庁の解体に伴う医療保険の受け皿の変更が予定されている平成20年10月頃までに、何らかの是正を求めようとしているとのことであります。

    私達は、現象的な不正利用面のみが強調され、それによってこの制度が歪んだものと多くの人に誤解されることを恐れています。確かに、一部柔道整復師のグループには営利主義に基づいた療養費委任払請求がなされていることは否定できません。私達は、このような一部のグループに対し、この制度の規律を強めるべきであると考えております。が、そのためには厚生労働省ないし保険者の理解と協力が必要であります。私達は、上記キャンペーンが真実に基づいて、社会的な誤解を与えないよう正確な情報を人々に提供する必要があると考えています。

    そこで、私達は、この制度の根源的な問題点乃至そこから派生する諸問題の原因を明らかにすることが、この制度の正しい理解をもたらすための近道と考えております。そこで明らかにされた問題点に対応した改革案の骨子を本書をもって中間報告にとどまりますが、一応の提案をいたします。中間報告にとどまってしまいましたのは、この問題が柔道整復師の診療・治療についての報酬体系に深く関連するため、慎重に検討せねばならないと考えたからであります。

    この報酬体系を如何に規律するかは、柔道整復師の死活問題であることはいうまでもなく、柔道整復師の診療・治療内容を大きく規制することになります。従って、この点に関しては、慎重な検討と各柔道整復師の共通の認識が必要となります。私たちは、この点について時間をかけて討議を行い最終提案をしたいと考えております。尤も、不充分でありますが、上記報酬体系の骨子案を示し、今後の議論の枠組みを提供したいと考えております。
  • 2.前提考察
    問題点を抽出するためには、柔道整復師の診療・治療乃至療養費委任払い制度の内容を考察する必要があります。療養費委任払い制度との関連で、柔道整復師の診療・治療の内容をあげれば、およそ次の通りであります。

    (1)柔道整復診療・治療は保険医療適格をもちうるか?

    1. 現行の健康保険等の医療保険法は医師の診療・治療のみに保険医療適格を与え、柔道整復師のそれには、与えておりません。
    2. しかしながら、柔道整復師の診療・治療は国民的ニーズを受けて、昭和11年から委任払い方式により医師の保険医療に類する取扱いが行われるようになりました。これが、現在行われている柔道整復師療養費委任払い制度であります。
    3. この制度の適用を受けることによって柔道整復師の診療・治療は、一応、変則的ではありますが、実際上、保険医療適格を認める取扱いを受けるようになりました。
    4. ところで、この制度は厚生労働省(当時、厚生省)と社団法人 日本柔道整復師会との私法上の協定、及び上記団体に所属していない個々の柔道整復師と都道府県知事乃至社会保険事務局長との間での個別的な私法上の契約によって運用され、いわゆる法律上の制度ではありません。
    5. 療養費の算定(柔道整復師の施術報酬)は、保険医療(医師の報酬)との対比のなかで、二年に一度の割合で厚生労働省が一方的に決定する形で行われております。
    6. 以上のことから柔道整復師の診療・治療に一応、保険医療適格に準ずるものとして運用されています。

    (2)医師の診療・治療と柔道整復師のそれとの違いはあるでしょうか?  あるとすれば、どこがどう違うのでしょうか?

    1. 医師の診療・治療は、現在、専門的に細分化され、特定の疾患に限定される傾向を持っております。
    2. 柔道整復師の診療・治療は、筋・骨・腱・軟部組織等の疾患を対象としています。その意味では、一定の疾患に限定されております。これは、整形外科医の扱う分野の一部と重なり合う部分があります。
      1. 柔道整復師の扱う筋・骨・腱・軟部組織等の疾患についての診断方法には一定の制限があります。例えば、レントゲン診断の禁止等が挙げられます。しかしながら、超音波診断装置の所見等の客観的(他覚的)な診断が行われるようになりました。
      2. 柔道整復師の診療・治療の中心は手技であります。以前より、整形外科医と同様に電気治療器による治療等も行っております。手技治療は、日々の連続した治療を行い経過観察を行っていきます。比喩的に言えば、整形外科医の投薬治療に類するものであります。
      3. 柔道整復師の診療・治療(徒手整復)に親しむ疾患の中には、手技の集中治療によって二次損傷のない早期の快復が見られます。
      4. 柔道整復師の診療・治療は、全身の筋、骨のバランスを正すため整復し患部の調整を行うことに特色を持っています。負傷部位をかばうことによって、疼痛回避動作や跛行等が起こり筋肉・腱・関節の痛みや腫れを引き起こします。負傷部位以外の部分の痛みの除去を行うことで予防・治療も同時に行います。
      5. 柔道整復師の診療・治療は、運動機能の快復のみならず、痛みの軽減ないしは一時的な鎮痛効果をももたらします。患者の日常生活への早期の復帰に効果をあげております。
      6. 筋・骨・腱・軟部組織等の疾患の痛みは、必ずしも外傷のみに限りません。ストレス等の心的なものから発生することもあります。このような疾患の場合の治療は、治療と慰安行為との限界が困難となります。尤も、この点については、整形外科医の治療についても同じであります。
      7. 現在の柔道整復師の診療・治療は、古来の伝統的な徒手整復様式を基本としながら西洋医学の知見を取り入れ、合理的な治療方法が確立しております。

    (3)なにゆえに患者は整形外科医の治療の他に柔道整復師の治療を求めるのでしょうか?

    1. 整形外科治療によるオペ (手術)の回避、二次損傷乃至侵襲痕の残留への不安。
    2. 薬物治療による副作用からの回避。
    3. 徒手整復に親しむ疾患の治療成果は、整形外科医の場合と柔道整復師による場合とは、さほど大きな違いがないこと。
    4. 柔道整復師の治療は手技によるため、侵襲性に乏しく、患者に心理的負担を与えることが少なく、治療時間も比較的長いことによる治療に対する満足感が得られること。
    5. 柔道整復師の診療・治療の料金の内、患者負担が整形外科のそれよりも廉価であること。例えば、同じ腰部の疾患(腰痛・腰部捻挫)の(初検日・初診日)自己負担金についていえば、柔道整復師の診療・治療の場合630円、整形外科の場合930円になります。 但し、柔道整復師が扱わないX-P料金は入っていません。後療に対する自己負担金は、医師の場合に比べて廉価になっております。

    (4)柔道整復師の診療・治療は、医療ですか?

    1. 講学上、柔道整復師の業務は医業類似行為と呼ばれております。それは医療でなくて、医療に類似するものという意味に理解されます。しかし、それは慰安行為とは区別されております。
    2. 柔道整復師の診療・治療を医業類似行為という用語で説明するのは、医師法第17条(非医師の医業禁止)で、医業は医師が独占するとされているためです。しかし、行為の性質から見て、柔道整復師診療・治療が医療であるにもかかわらず、医師法との関係でこれを医業類似行為と呼んで区別しております。ところで、このような概念で柔道整復師の診療・治療を捉えることは柔道整復師業務の規律を適正に行うことはできません。かかる点から、柔道整復師業務を広義の医療行為と位置付け、医師の医療に関する規律(医倫理等)と同程度の規律を行うことが妥当であります。
    3. 厚生労働省(の担当者)から柔道整復師が医療行為(広義)を行うことについて「それほど医療行為をしたければ医師の免許を取得するように」という口頭による説明がしばしばなされます。(社団法人日本柔道整復師会の傘下団体の役員の話)これは医師のみを医療専門家とする思想であり、現実の医療社会システムを理解していない考え方であります。社会的に存在する医療行為(広義)は医師のみが行っているものでありません。医師以外が行う医療技術もあります。最近では、医師にも柔道整復師が行う徒手整復を取り入れている人もおります。医師不足が叫ばれている現下の社会情勢において、整形外科医以外の医療従事者の職務を拡充することもその解決に寄与するものであります。また、「医師になれ」という発言は柔道整復師の職業を天職とするものに対する人格的侮辱とも受け取られるものです。私達はこのような心無き発言に強く怒りを覚えます。それぞれの医師・医療従事者がその持っている医療技術に基づいて役割を分担し、多様な医療サービスを国民が受けられるシステムこそ、真の国民医療の姿であると考えます。

  • 3.問題点
    (1)なにゆえに多部位請求、または治療回数の多い治療(濃厚治療)が行われるのでしょうか?
    1. 社団法人日本柔道整復師会と厚生省(当時)との私法的協定による療養費委任払制度(以下、協定委任払と略称)で運営されていた時代は、団体内部の自主規律によって柔道整復師の診療・治療の倫理・良識から、部位数・回数はおのずから枠組みが定められておりました。従って、今日のような多部位・濃厚治療の問題は現在と比べて比較的少なかったように感じます。
    2. ところが、社団法人日本柔道整復師会に所属しない柔道整復師に対する療養費委任払いの取扱いに個人契約が認められるようになってから、業界団体の内部規律のルールが作用しない場面が多く生じるようになりました。このことにより多部位請求・濃厚治療の多発する傾向を持つようになりました。
    3. 当会は、社団法人日本柔道整復師会とは別の業界団体として昭和57年2月に設立しました。私たちは、設立と同時に当時の厚生省(現厚生労働省)に対し、協定委任払いを結んで欲しいと働きかけていました。その運動の過程で社団法人日本柔道整復師会に属していない柔道整復師に対して、一律に個別契約を行う用意があるという話しがありました。私達は、療養費委任払制度の適正な運用のためには団体規律の伴う協定委任払いが妥当であることを訴えてきました。
    4. 昭和63年7月 厚生省(現 厚生労働省)は、社団法人日本柔道整復師会以外の業界団体を認めるようになってしまうことを恐れて、他団体と協定を結ぶことを恐れて、個別契約方式を採用しました。この個別契約方式は、当初から乱用される恐れがある、或いはこれを営利事業に転用されてしまう恐れがあることが見透かされておりました。厚生省(現厚生労働省)が、その乱用の防止策を施すことなく、個別契約方式を採用してしまいました。
    5. 当会は、会員に対し自主規律を求め、個別契約による乱用の芽を摘んできました。しかしながら、個別契約が存在する以上、当会の団体規律にも限界を生じております。また、療養費委任払制度によって療養費が確実に得られることを利用した企業的運用が多発するようになりました。これらの現象は、この制度の本来の趣旨を逸脱するものであります。
    6. 柔道整復師の取扱う疾患は、その生活乃至労働様式等の変化に伴って大きく変わりました。現代のストレス社会は、現代人に外傷 (ケガ)疾患の他に、心的要因による筋・骨・腱・軟部組織等の疾患の痛み及び運動制限等の機能障害をもたらすことも少なくありません。また、食生活等の変化による筋骨の脆弱化にともなってスポーツ等の文化社会活動による筋・骨・腱・軟部組織等の疾患、損傷がみられるようになりました。スポーツに参加する人々も多くなりそれによる損傷の予防・治療が求められております。更に、超長寿社会での加齢による筋・骨・腱・軟部組織等の疾患、いわゆる明らかな外傷とみられない疾患も多く見られるようになりました。
    7. このような疾患は、手術による治療はもとより、薬物による治療も多くの期待が出来るものではありません。現在のところ、手技等による徒手整復の繰り返しによってある程度の医療効果を上げております。
    8. 最近、整形外科医も徒手整復の効果を認め、この技術を利用する方が増えております。そこでは、理学療法士、作業療法士、柔道整復師等の医療従事者による医療サービスが提供されております。
    9. 手技治療はその性質上、慰安行為と区別することが困難な場合もあります。しかも、最近の治療方針は、根治以外に、癒し治療乃至は一時的な社会復帰等のための治療が求められるようになっております。この点は、医師の医療についても同様であります。従って、ますます治療と慰安の区別が、柔道整復師のみならず医師においても困難となっています。さらに医療には福祉という側面がありますので、この点からも慰安行為との区別が実際上、つきにくい状況にあります。それぞれの医師・柔道整復師の医療倫理の確立と保険医療・療養費委任払いが公的医療であることによる法的規律が望まれることになります。

    (2)公的資金による医療のあり方

    1. 療養費委任払い方式による柔道整復師の診療・治療は医療保険に類しております。
    2. 医療保険は、公的資金によって営まれる国家政策上の医療でありますから、その治療は公的医療となります。
    3. この観点から、すべての医師が当然に保険医療機関となるものではありません。
    4. 柔道整復師の療養費委任払いは、臨床経験の有無を問うことなく、開業した全ての柔道整復師に当然のように認められております。これは公的医療の観点から好ましいことではありません。
    5. 医師の場合と同様に柔道整復師の場合も、公的資金による医療に相応しい適格要件が必要であると考えます。どうしてこのようなことが今まできちんと議論されなかったのでしょうか。厚生労働省による適切な取組みが望まれます。
  • 4.対策
    (1)私達は、柔道整復師療養費委任払い制度の適正な制度設計とその運用を行う必要があると痛感しています。その適正な制度設計を作りあげるのには、a) 柔道整復師の診療・治療の内容とその報酬基準の明確化 b) 療養費委任払い制度の乱用防止策を如何に考えるかにあります。その基本的な制度設計を示しますと、およそ以下のことが考えられます。
    1. >柔道整復師療養費委任払い制度は、医師の医療保険制度と同じく出来るだけ患者の負担を少なくして、柔道整復師医療サービスを受けられるための制度であることを再確認すること(医師・柔道整復師のために保険医療・療養費委任払い制度があるのではありません)。
    2. 柔道整復師の診療・治療は、前述の通り手技を中心に電療・罨法その他の治療が補充的に行われております。手技治療は、前述の通り整形外科医の投薬治療の一部(痛みの鎮静化)に対応するものであります。集中的な手技治療を行うことによって、患者の負担を軽減し早期の快復と社会復帰をもたらすことができます。
    3. 柔道整復師の診療・治療は、充実した一定期間に亘る集中治療を行うことが望ましいと考えられます。それによって、通院回数を減らすことになり、患者負担の観点からも望ましい結果が生まれます。そのような観点から柔道整復師の施術料金体系の抜本的な見直しが必要です。例えば、計画治療による料金化や見積り治療等は、検討に値するものであります。
    4. 柔道整復師の診療・治療に関し、疾患の性質から比較的回数の多いケースが認められます。また、筋バランスを測りながら治療するため、比較的治療箇所が多くなる傾向があります。それをコントロールするのは、治療効果測定が必要になります(漫然たる治療を抑制するために治療効果を測定する必要があります)。そのため集中治療後に行われる継続治療は、治療効果を定めながら行うことが必要となります。
    5. 明らかな外傷以外の疾患は、繰り返して同じ部位の周辺に同じような症状が発生することが多く見られます。このような場合、間隔をおいた治療が行われることがあります。この場合、前の負傷原因とその時の治療効果との関連で、それが新しい負傷原因によるものか、その前の負傷原因が関係しているのか見極めて治療方針をたてねばなりません。
    6. 柔道整復師は、患者に対し出来るだけ早い時期に治療計画を書面で明示することが必要です。
    7. 治療報酬の体系化のための施策を挙げれば、およそ次の点が考えられます。
      1. 柔道整復師は、例えば、患者に対し治療の都度その症状及び治療内容を具体的に記述した書面を渡すこと(治療内容の透明化のため)。
      2. 電療治療をする場合は、どの種類のものを、どの部位に、どの位の時間、どの位の強さで、何のために行うかを施術録に明らかにすること。
      3. 負傷原因・年月日は、必ず柔道整復師が書面に明記することとする。尤も、患者が負傷原因・年月日を具体的に説明できない場合は、症状の内容、程度及び発症日を特定し、治療計画を立てることによって料金を算出する。このような記載のない治療は慰安行為とみなし、療養費委任払いの適用を受けないものとします。
    8. 柔道整復師の治療方針、内容に即した治療報酬(施術料金)の設定が必要であります。療養費委任払い制度は、治療体系に則した治療報酬を前提とします。例えば、整形外科医の治療には柔道整復師・理学療法士等を使って理学療法を行う他に投薬治療も行われております。これに対し柔道整復師の治療は、専ら手技治療による痛みの鎮痛化、或いは機能回復が行われております。従って、その治療報酬は、技術料を中心とする等それに則したものとして設定されるのが相当であります。
    9. 集中治療後の医療効果を施術録に明記し、その後の後療の内容を明らかにすること。
    (2)公的医療の適格性の審査システムの構築 柔道整復師の療養費委任払いは、前述の通り、保険医療に類した公的資金を利用する医療であります。従って、この委任払い制度を利用出来る柔道整復師には、一定の資格(認定)を必要とすることが妥当であります。その適格要件としては、柔道整復師診療・治療を5年以上行っている柔道整復師乃至3年以上の経験を有した保険医指定のある整形外科医の下で、少なくとも600時間(8時間×75日)の療養費委任払い制度ないし保険医療による治療に従事していること。また、1,000時間(1日5時間×200日)の基礎的・応用的研修及び医療倫理研修を受講した柔道整復師であること。このふたつの要件を充たした柔道整復師を柔道整復師療養費委任払い制度を利用出来ることを明らかにするため、療養費委任払い指定柔道整復師と認定し、療養費委任払いを取扱う資格を有する者とします。

    (3)療養費委任払制度の乱用防止策
    1. 個別契約を廃止し、社団法人 日本柔道整復師会並びにこれと同程度の組織をもった柔道整復団体に対し、協定委任払いに切り換えること。
    2. 仮に、個別契約の廃止が困難であるとすれば、個別契約者を団体規律に服させるために社団法人 日本柔道整復師会乃至それと同程度の保険審査機構を持った団体を通して療養費委任払い請求を行うものとすること。
    3. 療養費の委任払い代行請求を行う団体は、その審査基準を事前に厚生労働省、保険者に提出するものとすること。
    4. 上記団体は、不正請求者に対し療養費委任払い制度利用の期限をきった一時停止が出来るものとする。
    5. 上記団体は、年間10時間以上の療養費委任払い制度の講習会を開催するものとする。
  • 5.『臨床柔道整復師制度』の質的向上を図るためにどのようなことをしたらよいか
    現在、医師不足は社会問題となっています。柔道整復師は、特定の分類ですが医療に従事しております。そこで、医師不足の一助として柔道整復師の質の向上が必要となります。柔道整復師には、定年制がありません。しかしながら、国民に信頼される資格としては免許更新制度を採用し、常に新しい時代の変化に対応できる臨床柔道整復師の確保に努めなければなりません。したがって、『 臨床柔道整復師』の資格について免許更新制度を採用することが必要であります。例えば、更新期間は、当初は7年、7年後には5年毎の更新とするものとします。更新のための条件は、『 当初7年に関しては、15時間の基礎講座及び応用講座の受講を必要とする。 5年毎の更新については、5時間の基礎・応用講座を受講するものとする。

以上